yamakeirnsのブログ

趣味のブルベを中心に気の向くままに書き留めていきます。

粟ヶ岳エベレスティング

11月5日(金)に掛川の粟ヶ岳で私を含め有志5人でエベレスティングにチャレンジしました。エベレスティングはオーストラリアのメルボルンのサイクリストグループ「HELLS500」が2014年から公式チャレンジとして設定し、はじめたものです。累積標高がエベレストの標高と同じ8848mに達するまで単一の坂を登り下りするシンプルなチャレンジです。どの坂を選ぶかにより難易度は変化しますが一般的には達成には20~24時間程かかり、獲得標高が6000mを超える辺りからは、フィジカル的に厳しくなるので、それをカバーするタフなメンタルが必要とされます。ルールは以下の通りです。

■累積標高8,848m(29,029フィート)を記録する
■ひとつの山(丘)の同じルートを使用する
■下りも登りと同じルートを使用する
■途中で睡眠を取ってはならない — 1スティントで完遂すること
■食事・水分補給・充電の休憩時間は総合タイムに含まれる
■登りは毎回必ず頂上へ到達すること
■安全に下り、無事に自宅へ戻ること
■タイムリミットはなし

この中で一番厳しい縛りは睡眠を取ってはならないというルールだと思います。

事前の情報収集では以下のHPを参照しました。

www.redbull.com

今回のエベレスティングの企画者はサイクリング仲間のF井さんです。粟ヶ岳に自転車で200回以上登頂しています。その為、粟ヶ岳がチャレンジコースに選ばれました。粟ヶ岳は休日は多くのハイカー、車の往来がある為、平日に決行することとなりました。私は1週間前にAR中部の600kmブルベを走っているのでその影響を心配しましたが、幸い3日間しっかり休息して、ダメージは手の平の打撲による末梢神経の痺れが残っているだけでそれ以外は体調は万全でした。F井さんもAR中部の600kmブルベはエントリーしていましたが、今回のエベレスティングに集中する為、DNSしていました。他の参加者は今年ブルベでSRを達成したF森さん、Sさん(挑戦者中唯一の女性)、トライアスロンをされているMさんです。

粟ヶ岳の麓にある東山いっぷく処の休憩所を基地に使わさせていただいてチャレンジします。屋根、テーブル、ベンチがあり電源もあったので、照明や電気ポットを持ち込むことが出来ました。いっぷく処のご主人にはチャレンジ中、いろいろとご配慮をいただき助かりました。粟ヶ岳は標高が532m、登坂距離が4.2km、平均勾配8.3%の厳しい坂です。普段なら登坂は1回で十分な坂ですが、その坂を25回往復して達成を目指します。

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チャレンジ前日、仕事を終えてから補給食の買い出しに行きます。5日昼は山頂のお店で食事を取るつもりですが、それ以外は自分で用意した補給食で賄わなければなりません。緻密な人は必要カロリーから補給食を準備すると思いますが、私はそこまで緻密ではないので適当に準備しました。補給食の一覧は以下の通りです。

水2L×2本/麦茶2L×1本/ポカリスウェット1.5L×1本/ドリップコーヒ1袋/ミニバウムクーヘン1袋/黒糖パン(6個入)/スティックチョコパン1袋/ロールパン(6個入)/カップラーメン/カップ焼きそば/チョコレート1袋/バナナ(5本)×3袋/柿の種(6袋入)/味噌汁(10袋) 計2,636円

結果的にほぼこれで賄えて適量でした。甘い物だけでなく、塩っ気のあるものを持っていったのが良かったです。F井さんが用意してくれた電気ポットのおかけでコーヒー、味噌汁が気楽に飲めて助かりました。補給食については、強いていえば現地に自販機がなかったのでコーラのペットボトルも用意すれば良かったと思いました。

ウェアは秋ジャージと冬ジャージ、保温アンダーウェアを、グローブは秋用と冬用を用意し、使い捨てカイロも準備しました。ブルベと違って車に積み込んでおけばいいので考えられるものは積み込んでおきました。

それ以外にはLED照明と一口カセットバーナー、マグカップ等も準備しました。

↓補給食は5日夜、6日朝の食料+αで準備しました。

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さて肝心なライドプランです。今回は5日8時にチャレンジをスタートします。粟ヶ岳は初めての登坂で私がよくいく新宮池とコースプロフィールは似ています。新宮池の実績から類推して、無理のないペースとして登りは時速9km/h程度で28分、下りは30km/h程度で8分と1往復40分弱で想定しました。3往復すると獲得標高が1000m程度になるので最初の3往復後に30分、次の3往復後に60分の休憩でその繰り返しでトータル21時間程度で達成する予定を組みました。F井さんは25時間程度の見込みでペースを組立てていました。

一通り準備が終わり、いつもと同じ23時過ぎに就寝しました。しっかり眠って4時半に起床し、朝食を済ませて、5時半に自宅を出発します。平日なので通勤ラッシュに巻き込まれない様に早めに出発しました。それでも一部で混雑がありましたが、7時前には東山いっぷく処に一番乗りで到着しました。早速準備します。今回の相棒はTarmacSL7です。S-Worksグレードではないですが、十分軽く、コンポはスラムのE-tap/Rivalです。とにかく登り続けるので普段は装備するツールBOX、ドリンクボトルは外し最軽量な状態で走ります。ブルベでは履かないビンディングシューズを持参しましたが、中敷きを入れてくるのを忘れてしまい、止む無くスニーカーで走ります。

↓今回のエベレスティングの相棒はTarmacSL7です。

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↓今回のベース基地、東山いっぷく処。後ろに見えるのが粟ヶ岳です。

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しばらくするとMさんが到着しました。Mさんは今回TTバイクでチャレンジするとのことです。ロードバイクがないので止む無しとのことで、見た感じかなり重そうで、前傾がきつそうで大変そうです。さらにF井さん、F森さん、Sさんと到着し、全員時間前に揃いました。休憩所に食料や備品を運び込んで準備し、いっぷく処の店主の方にスタート前の写真を撮ってもらっていよいよスタートです。

↓これから先の不安はありますが、スタート前なので全員元気です。

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8時少し過ぎてスタートしました。ブルベと違い自転車に何も積載がないので軽快です。粟ヶ岳は初めて登りますが、新宮池に比べると勾配が緩む区間がいくつかあり、あと眼下の景色を楽しめながら走れるので思ったよりも登り易い感じでした。想定では登坂は28分程度でしたが、スタート直後は元気なのでペースを加減しても24~26分のいいペースで登れました。登りは想像よりも登りやすかったですが、想定外だったのは下りでした。山頂から1.5km程の区間アスファルトというよりはコンクリート舗装に近い感じで荒れていて、勾配も厳しいのでブレーキを握りっぱなしの状態です。そこを過ぎると舗装は少し良くなり、慣れて来ればスピードが出せる感じでした。全般的にブラインドコーナーが多く、平日とはいえ時折、車の往来があり、常に緊張を強いられました。想定した30km/hで10分弱で下る想定は早くも破綻しました。速いスピードで下れたのはF井さんとMさんだけで、私とF森さん、Sさんは下りでも疲れる有様でした。とりあえず3往復をこなし最初の休憩を取ります。15分程休憩して次の3往復に向かいます。6往復目の山頂で予定通りお店で昼食を取ります。ちょうどお昼時だったのでハイカーでお店は混雑していました。かなり待つことになりましたが、いい休憩になると思い、のんびり山頂で遠くに遠州灘が臨める風景を楽しみながら待ちます。

↓粟ヶ岳山頂 茶祖といわれる栄西禅師の銅像がシンボルです。

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↓この日は秋晴れで、遠くまで見渡せました。朝方は富士山も遠望できました。

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↓山頂からの絶景を楽しみながら生姜焼き定食を頂きました。

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↓新宮池と異なり山頂にお店があり、テラス席があるのでのんびりできます

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お腹が満たされほっと一息いれましたが、残りはまだ19往復あります。途方もないのでとりあえずあまり考えない様にして目先の3往復をしては休むを繰り返します。F井さん一人が休憩少な目で険しい顔をしながら登坂を繰り返しています。私を含め他のメンバーは時間制限はないのでおおらかな気持ちで適宜休憩しながらチャレンジを続行します。回を重ねるごとに登りのペースは徐々に落ちて30分前後になりました。ただ下りは慣れるにつれてペースを上げられたので、トータルでは日が沈む前の明るい時間帯はほぼ想定通りで進行しました。17時近くなり日が沈みはじめると、ライトを点灯しての走行になります。途端に下りでライトが届かない先の舗装が確認できないので大幅減速になり、1往復の時間がかなりかかるようになりました。それについてれ3往復毎に休憩する計画が崩れて、1往復すると都度休憩になりました。気温も下がり、下りや停止している時には汗冷えで寒さを感じるようになりました。カップ麺とパン、バナナ、味噌汁で夕食をとり、睡魔に襲われない様にブラックコーヒーを飲んで一息つきます。秋ジャージでは寒くなり始めたので保温アンダーの上下を着て、さらに冬ジャージに着替え、両腿のアンダーウェアの上にカイロを貼り付けました。私は脚から冷えてくるタイプなので両腿カイロはかなり効果的です。夜間の気温は10~13℃程で一桁まで下がらず助かりました。12往復を過ぎ、ほぼ半分が過ぎた辺りから、夜間走行になったことも加わり、精神的に残りの往復が重くのしかかってきました。ブレーキ握りっぱなしの下りには本当にうんざりしました。Mさんは門限があるので10往復程度して21時過ぎに離脱しました。残された4人の中でF井さんはエナジードリンクの力も借りて一人休憩少な目でも黙々と走り続けます。F井さん以外の私を含めた3人は1往復毎にしっかり休憩、補給して、励まし合いながらチャレンジを続けます。当初の想定では午前5時に達成予定でしたが、多すぎる休憩と夜間の下りの大減速で計画は大幅に狂い、まだ5往復残っていました。エベレスティングの壁と言われる、6000mを過ぎた辺りでもブルベで鍛えられているおかげか、脚にまったく痛み等はなく、睡魔も襲ってこなかったので時間さえかければ何とか達成できそうな見通しが立ってきました。日の出となり明るくなったことで、下りのペースを上げることができて助かりました。ペダルを踏みこむ力が落ちてきて登坂に30分以上かかっていますが、あと少しといい聞かせながら頑張ります。休憩少な目で走ったF井さんに最大2往復差つけられましたが、最後の追い込みで1往復差にまで縮めました。F井さんは所要25時間で9時ごろに1番に達成しました。それを見届けた後、最後の1往復に挑みます。とにかくパワーが落ちているのでダンシングで自重を使って、テンポ走で何とか登り切りました。慎重に下ってF井さんから遅れること1時間の26時間で無事10時頃達成しました。とにかくここまで長い苦しい道のりでしたが達成できてほっとしました。私より多く休憩したSさん、F森さんも苦闘しながら2時間後に無事達成しました。4人達成は快挙だと思います。

↓最後の下り。F井さんの奥さんが撮ってくれました。顔に余裕がありません。

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↓214km、総獲得標高9108m 達成に26時間もかかりました。

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↓4人無事達成です。第1回となっていますが、第2回の予定はありません。

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多くの方のご協力と応援のおかげで、初挑戦でしかも初めて登る粟ヶ岳でエベレスティングを達成できて感慨ひとしおです。

帰宅して一眠りしてからネットで調べた申請要領に従い、無事HELLS500のエベレスティングの殿堂HALL of FAMEに記録が登録されました。 

↓申請の際、下記HPの情報が役に立ちました。

indoor-roadbike.com

↓HELLS500の公式サイト ここのHALL of FAMEに記録されます。

everesting.cc

 

↓無事、HELLS500のエベレスティングの殿堂に入ることができました。

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↓申請するとStravaのアクテビティに主宰者のAndyさんからコメントがきます。

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私が申請した11月6日時点では世界で8671名、日本で314名の達成者が殿堂入りしていました。その中で日本人の女性はSさん含めて僅か12名でした。粟ヶ岳でエベレスティングを達成したのは私達4人が初めてのようです。

エベレスティングは選択したコース次第で難易度はかなり変わると思います。粟ヶ岳は登坂距離4.2kmで獲得標高が354m、平均勾配8.3%です。25往復で達成できるので登りは効率がいいですが、下りは舗装が悪く、ブラインドコーナーが連続し、車の往来があるので安全を考えると、基本スピードが出せません。エベレスティングでは車の往来があまりなく、下りはノーブレーキで緊張感なく下れる坂が最適だと思います。あとスタート地点か坂のピークにトイレがあることが必須だと思います。コンビニ等があれば補給も心配ないのでさらに最適です。コースさえ選べば20時間かからないで達成できると思います。

走行記録を振り返ると私の場合は移動時間が17時間50分で26時間で達成しています。達成するのに実に8時間も休憩したことになります。多分休憩多すぎだと思います。F井さんは私の半分程度の休憩でした。登りで私より3時間近く余計にかかっていますが、下りで1時間早く、休憩の少なさで大きく挽回して私よりも1時間早く達成しました。

達成に向けて大きな力になったのはどんな厳しい状況でも弱音をはかない仲間と励まし合って走ったことです。一人での挑戦だとかなりハードルがあがったと思います。とりあえず、今現在の自分の走力がどの位置にあるのかを客観的に確認できました。

私のブルベは年内シーズンオフですが、また2022年度はブルベを中心にいろいろなチャレンジをしたいと思います。